こんにちは曽根です。
毎回こんにちはから始めているんですが、こういう書き出しに使える挨拶って意外とないですよね。せっかくなんでバリエーション持っておきたいんですが、「やっほー」はちょっとご機嫌すぎるし、「ごきげんよう」っていうほど上品でもないので、なかなかフィットする言葉が無いんですよね。誰か良い言葉あったら教えてください。
前回に引き続き、赤い小鬼「胎鬼」のメイキング後編です。前編ではモデルをプリントするところまででしたが、後編ではプリントしたモデルの組み立て、塗装、そして展示までをまとめていきます。
それでは例によって日記形式でどうぞ。
2025/09/13
前日の夜にプリントを仕込み退社。
朝、スマホの3Dプリンターのアプリでプリントが終了していることを確認。しかしこの段階ではプリント自体が成功しているかどうかは分からないため、結果は出社してからのお楽しみ。絶対に失敗したくなかったのでサポートを死ぬほど付けたが、結果は……。

謎のアングルで申し訳ないが、一応成功……!
ここからプレートからモデルを剥がしていくのだが、サポートを強力にしすぎたせいで全く取れない。
サポートからむりやり引っ剥がすことでモデルはなんとか取れたものの、ラフトがプレートからまったく剥がれず2時間くらい時間を溶かす。心が折れそうになった時に、ばたけさん(icebergの長)からのあるスラックを思い出す。

なんでこんな朝早くにシェアしてくれたのか分からないが、リンク先の内容的には「温水をかけるとプレートからモデルが剥がしやすくなる」というもの。これだ……! とさっそく試すと、さっきまでの格闘が嘘のようにサクッと取れてしまった。ありがとうばたけさん、マジで助かりました。
洗浄した後に硬化もしていく。

こんな感じでわりと綺麗に出力できているが、すでに傷が多い。なぜ……。
そして硬化したパーツを組み合わせてみると恐ろしい事実が発覚する。
プリント用にバラバラにした全てのパーツがかみ合わない……。
腕もお面も見事にすべてハマらない。写真のお面の上顎と下顎も実は全くかみ合わない。
胴体の部分は重すぎてプレートから落ちる懸念があったため、軽くなるように真っ二つにして中に空洞を作っていたのだが、これに関しては噛み合わないどころか歪みすぎて、でっかい隙間が発生している始末。
組み合わせてみているところはショックすぎて写真も撮っていない。
相当量のレジンを使ってしまったのでもう一度プリントし直す時間もない。
かなりガックリきてしまったので台座部分のモデルのプリントを仕込んで、この日はトボトボと帰宅。
2025/09/14
噛み合わない部分は削るなり切断するなりで対処して、隙間の部分はパテで埋めるしかないな……
ということで、家の近くの模型屋でタミヤ製のノコギリとパテを購入。ちなみにこの模型屋さんは電車や戦闘機のプラモなどがメインの、令和においてはなかなかオツな模型屋である。
ノコギリ片手に会社に着き、昨日仕込んでおいた台座部分を取り出していく。
もちろん取り外すときはお湯をぶっかけて一撃。乾くのを待つ間に、気を利かせてつけたダボなどを根こそぎ伐採していく。こんなことならいっそつけなければ良かった……。
はまらない原因は、いろいろな要因でダボが膨張したり穴が縮小したりして歪みが発生してしまったせいのようだ。ここもプリント時の設定が必要らしい。
組み合わせに最低限必要なダボ以外は伐採し、収縮してしまったダボ穴はドリルで拡張。
隙間にパテを塗っていく。

嘘だろパテ塗るの下手くそすぎるだろ。メイキングでも普通は出せないレベルの大惨事である。
しかしこういったものまで見せていくのがアイスバーグである。
そんなこんなでようやく組み上げが終了。


角の先端が折れている。知らぬ間にポキッとやってしまっていた。動揺してピントも合っていない。
今後また絶対折りそうな気がしたので、予備の角を左右それぞれ3本ずつ追加でプリンターに仕込む。
2025/09/18
会社から近いヨドバシカメラにて必要になりそうな塗料などを片っ端からカゴに詰めていく。
塗装用品がキッズのおもちゃコーナーの横だったため、近くを通る子供たちに「うわーあんなに塗料買い込んじゃって、ガチのオタクじゃん」みたいな冷たい目線を送られる。
っていうか今どきのキッズって「オタク」とか言うのか?もうわりと死語に近いのでは。
その他、塗装の際に必要になりそうな筆やマスキング用のジェル?、エアブラシ掃除用の溶剤といったものをガンガン買い込む。品数が多すぎて、レシートが笑っちゃうくらいの長さになったので画像を貼りたいが、レシートってこういうところに貼っていいのか……? と疑念がよぎったので文章に留めておく。
2025/09/21
今日から塗装に着手していく。塗装場所はもちろんベランダ。
下準備として、細かい傷を埋めたりする下地塗料のサーフェイサーをまず始めに吹いていく。一度ざっとサーフェイサーを吹いてみると、一応全体はヤスリで磨いたのだがガタガタの部分が分かりやすく浮き出てくる。
このまま進めていいのか….?と心配になるレベルだったので再度ヤスリがけを行う。
ヤスリがけした後に再度サーフェイサーを吹いたのだが、乾く前に間違って触ってしまったり風で倒したりとミスのオンパレード。この日は下地の修正と準備で一日が終わってしまった。

2025/09/22
まさか下地の準備で丸一日使ってしまうとは思ってもいなかったが、気を取り直して本格的に色を塗っていく。ベースに赤、鼻先やエッジに黄色、くぼんだ部分に茶色や黒を乗っけていく。

なんかそれっぽいんじゃないか….? 一旦乾くのを待つ。
待ち時間には「ELDEN RING NIGHTREIGN」をプレイ。以下はこのゲームのAIによる要約。
ーー『エルデンリング ナイトレイン』はフロム・ソフトウェアが開発した『ELDEN RING』のスピンオフ作品で、協力型サバイバルアクションゲームです。プレイヤーは「夜渡り」となり、3日間を生き抜いて3日目に現れる「夜の王」を討伐するローグライク要素のあるゲームです。『ELDEN RING』のシステムを踏襲しつつ、オンライン協力プレイに焦点を当てています。ーー
というようなゲームなのだが、一回のプレイ時間が大体40分〜1時間ほど。時間を溶かすにはもってこいだ。発売当初からプレイして大体250時間ほどプレイしている。
ローグライクなので繰り返し何回もプレイすることを想定したゲームではあるが、一向に飽きが来ない。毎回新鮮な気持ちでプレイできるって訳ではないが、暇な時に無意識にゲームを起動させてしまっている。
1回このナイトレインをプレイしたところで塗装を再開。乾いた状態を見ると、他の色を重ねすぎてベースの赤が死んでしまった部分が気になってくる。ふと、塗料を溶かす溶剤をキムワイプにつけて擦れば落とせるのでは?と思いトライしてみる。
ーーーーー失敗した。
またもやショックで写真は撮っていないが、思ったよりごそっといってしまい、前日に塗ったサーフェイサーごと落としてしまった。辛い。辛すぎる。塗料を削ぎ落としてしまった部分にまた0から塗料を重ねていく。
待ち時間にはナイトレインをプレイする気にもならず、最初の色を塗った写真を眺めながら「ここまでは良かったんだ…..ここまでは……」とスマホを放心状態で眺めて時間がすぎていく。
普段のCG作業ではCtrl+Zで戻れるが、塗装はそうはいかない。
一挙手一投足がすべてありのままに反映されてしまう。
乾いたのちに色を重ねてみたものの、もうどうやってもムラになってしまった。
もうどうにもならないので、「ムラが味だろ?」と開き直り、
ウェザリングという汚しの処理をしていく。
これは黒めの塗料を筆で塗って、乾ききる前に塗料を残したい部分以外をさっと拭き取ることで汚れを作っていく。

ウェザリングにより立体感は出てきたが、元の色味が失われて汚めの茶色の雰囲気になってしまった。辛い。一旦乾かしたいので、この日はこれで終了。
2025/09/25
塗装が乾くとまた雰囲気が変わってきたため、調整したい箇所や色むらが強すぎた個所、元の赤に戻したい部分などを調整していく。
上からさらに赤を重ねたりして、とにかく色を重ねまくり修正していく。あと、歯の部分を普通に赤で塗ってしまっていたが、「変じゃない?」となったのでそこだけ塗装を剥がしたり。

なんとか前日に失敗したムラとかも誤魔化せてきたような気がする。
塗装に必要なものは、失敗しない注意力や精度ではなく、根気なのでは?という気がしてきた。
この日は作業もそこそこに身支度をして空港に向かう。
この日は泊りで万博の視察に。
開幕前には一度仮組で行っていたが、始まってからは初めて訪れる。尋常じゃない人の多さに驚愕。たしかにそろそろ閉幕が近いタイミングではあったが、これほど人が来ているとは……。
万博の感想を書きたいところだが長くなるのでこれくらいに。
一応、高額なインバウン丼を食べるなどした。
2025/09/27
展示の図録用に画像を提出する必要があったため、大学の後輩でカメラマンをしている友人に撮影を依頼していた。その撮影日である。この翌日が提出日なのでギリギリである。
記録をつけ忘れていたが、残っていた歯を塗ったり、角部分を磁石で着脱できるようにしたりしてこの日を迎えた。角部分には、ずっと名前がかっこいいなと思っていたネオジム磁石を使ってみたりした。
歯がどうみても白すぎるが、塗装してから乾くまでの時間を逆算するとどうやっても撮影に間に合わないのと、同時期に準備していた別なコンペの方の進捗が壊滅的だったこともあり、あっけなさがあるがこの時点でこの作品は完成とした。

せっかくなので撮影してもらった写真もいくつか貼っていく。
ずいぶんとかっこよく撮ってもらってしまった。頑張って作った甲斐がありましたな。
2025/10/15
ちょっと日が経ってしまったが、この日はいよいよ展示の搬入日。
渋谷をでかい荷物を持って歩きたくなかったため、作品は事前に郵送済み。展示の様子を撮影にばたけさんと合流して会場に向かう。輸送中にぶっ壊れていないか非常に心配だったが、特に問題なさそう。搬入といっても組み立てが30秒で終わるのですぐ終わってしまった。
展示の様子を撮影するばたけさんを横目に、他の作品を眺めてあることに気付く。
俺の作品……ちっちゃくないか…….?

クオリティとかは置いておいたとしても、小さすぎて圧倒的に埋もれている。存在感が全くない。。
よく「でかさは正義」と言うが、「小さいのは悪」だなとしみじみ感じた。仕事だったら展示に向けてパースを作ってサイズ感などを確認して作るものだが、少ない回数でプリントできるマックスの大きさで考えていたので、パースを作るなんて微塵も考えていなかった。。。不覚である。
この日の夜に大賞などを決める審査会があったのだが、もちろん入選ならずだった。。
結果もそうだし、こじんまりしてしまった点についてはかなりガックリきたのだが、そもそも展示映えするものという意識よりも、デジタルでつくった自分のキャラを現実に立ち上げる方に意識が振り切れていたからこそ作り切れたようにも思う。
最初から最後までことごとく失敗し尽くした制作だったが、
自分の欲求で駆動する制作はやはり気持ちが良いもんですな。
以上、赤い小鬼「胎鬼」メイキング後編でした。ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回からはもう一つのコンペに応募した作品のメイキングをお届けします。
また次回!
